大学での採点業務と primary school での口述試験
3月12日(木)、
今日は、primary school での仕事なので、歩いて行くことが出来る。少々歩きづらいが、 患部にハンカチを巻いて、 その上からゆるゆるのスェットを履いて出かけた。
到着すると、やはり足の動きが不自然だからか、 ランドリーにもどうしたのかと聞かれた。火傷をした、 と説明すると、
"Why don't you stay at home?"
確かに、ベナンは交通事情が悪いので、 そんな状態で出歩いていたら危ない。そういえば、 ベナンではあまり身体障がい者を見かけない。 障がい者がいないわけはないので、 家にいることを余儀無くされているということか。
ランドリーに教室まで案内されて、 中に入ると数名の生徒が待っていた。 どういう試験なのかをランドリーに聞いてみた。すると、 今日と明日で11歳から16歳くらいの子どもたちが試験を受けに 来るそうだ。全員、最初に私から英語でいくつか質問をして、 答えてもらう。英検の二次試験のようなものだ。How are you? や Where do you live? などを聞き、質問の意味が分かっているか、 きちんと答えられているかどうかを確認する。その後、 ベナンの国歌の英語バージョンを歌うか歌詞を読み上げる。 そして、その歌詞から単語の意味を聞いたり、 説明をさせたりして、歌詞の意味が分かっているかを問う。 上級者には、私が持ってきた本を使って、 さらに色々な質問をしていく。ぱっと聞いた限り、 特に制約は無いようで、ランドリーも「好きにしてくれていい」 というようなことを言っていた。ゆるい。試験というのに、 何ともゆるい。
とは言っても、私にとっては初めての試験官だ。 1つの教室に私とランドリーともう1人先生がいて、 それぞれ散らばって椅子と机をくっつけて、 3箇所で試験が行われるということなので、 近くの先生がやっていることを真似していた。すると、 その先生は、子どもが国歌を読み上げている際に、 何と一緒にハモり始めた。ノッてきた子どもは、 それまで歌詞を読み上げていただけなのに、一緒に歌い始めた。 試験というのに、2人とも熱唱していた。しかし、 歌い終わった後に、先生が単語の意味を聞くと、 その子どもは全く答えられていなかった。 先生はすかさず頭をバコンと叩いた。何だかもう、 コントを見ているようであった。子どもがボケで、先生がツッコミ担当か。日本語でツッコミのセリフを入れるならば、『 知らないでノリノリで歌ってたんかーい!』 といった感じだろうか。これを真似する気にはなれなかったので、 私は私のやり方でいこうと心に決めた。
ただ、確かにベナンの国歌は難しい。もちろん、 普通はフランス語で歌われるのであろうが、 バイリンガルになりつつある子どもたちにとっては、 フランス語で歌うのも大変そうなのに、英語バージョンとなると、 子どもたちには単語が難し過ぎる。案の定、 今日は10人ほどの生徒のテストをしたが、 あまり正答率は良くなかった。例えば、
"Trusting in the future, behold your flag!"
という歌詞だ。これの意味を中学生が分かったら大したものだ。 ベナンの学校には、国旗が掲揚されているので、私が
"What is 'flag'?"
と聞くと、分かっている子はその国旗を指差す。あるいは、 ベナンの国旗の見た目を説明している子もいた。 上級者にはさらに、 私が日本から持ってきた本を使ってテストをしてみた。この本は、 私が前回日本に戻ってきた際に友達からもらったものだ。 子ども向けに各大陸や国の説明が絵とともに載っていて、 ボリュームもあるので長く使える。その友達は、 私がベナンで英語を教える際に使えるようにと言って、 プレゼントをしてくれたのだ。早速、使う場面が出来た。
私はまず、アフリカ大陸が載っているページを開き、 生徒に見せた。そして、
"Describe where Benin is located."
、東西南北という単語も使えるかどうかを見たかったのだ。結果、 ここまで進んだ子たちは皆上級レベルなので、 予想以上に説明出来ていた。It's a country facing the ocean. など分詞を使った子もいた。
1人のテストが終わったら、近くの同僚の先生がやって来て、 どうだったかを尋ねた。点数にするそうなのだが、 何ともその基準が曖昧であった。国歌が読めたか、 会話が出来たかを伝えて、 どの点数になるかはその同僚に任せることにした。
中には、 英語のテストなのに堂々とフランス語で答える子もいたり、 全く会話にならなかった子もいた。 この学校は英語に重きを置いているが、やはり仕方なくこの学校に通っている子も多いのだろう。 全く英語に興味関心が無い子もいるようだ。ただ、 私が現地語もフランス語も話せないことを生徒たちは知っているの で、 上級者たちはあえて私のところに並んでいたのが興味深かった。 私を除いて他の2人はベナン人だ。現地語もフランス語も話せる。 完全なる外国人で、 英語でしかコミュニケーションが取れないということを知っている 彼らは、他の2人の先生のところが空いても、 あえて私のところに並んでいた。逆に、英語が苦手な子たちは、 私のところが空くと、この世の終わりのような顔をしていた。懇願するような目で現地語かフランス語が話したいと訴えていたが、残念ながら私は、現地語もフランス語も話せないフリをしているのではなく、本当に話せないのだ。
昨日の大学での採点に加えて、子どもたちへの口頭試験という、 初めてベナンで英語学習者を評価する経験が出来て、 とても面白かった。明日も同じように、 この学校で口頭試験がある。火傷の痛みを忘れて、 有意義な時間を過ごせそうだ。