給料問題(最終章←と信じたい)

 12月2日(月)、今日は特に研修としてやることが無いと言われ、雇い主の Mr. リオネルからは節約のため家にいて良いと言われていた。ありがたい。しばらくドタバタとしていて、睡眠不足でもあった。

 クラリスが仕事に出かけてから、昼ご飯を食べて、のんびりと過ごしていた。そこに、クレオパトラから電話がかかった。Mr. リオネルがベリに来ているので今すぐに来いとのお達しであった。
 どうしてベナン人はこういつも突然呼び出すのだろうか。しかも、今日は家にいて良いと言われていたから出かける格好もしておらず、片付けたいこともたくさんあった。しかし、給料のことであることは間違いない。土曜日に、彼は月曜日か火曜日に私に給料を払う手はずを整えると言っていたのだ。
 今日は私のお抱え運転手であるパトリックにも、来なくて良いと言ってあったのだが、もう私に絶対に来させるために、クレオパトラがパトリックに電話をして私を迎えに行くよう手配まですると言われた。仕方ない。急いで支度をして、パトリックを待った。
 幸い、パトリックはすぐにやって来てくれて、1時間後にはベリに着いた。到着すると、Mr. リオネルとクレオパトラは、会計士にちゃんと私の給料の小切手を発行するよう頼んでくれていたようだ。金額も確かに、土曜日に話し合ったが額と相違無く、その場で私も自らサインをした。この後、彼と共に銀行に行き、その場で手渡しで3ヶ月分の給料がもらえるとのことだ。
 銀行は近くにあるので、Mr. リオネルは自分の車で向かうことにした。私はパトリックのバイクに乗り、パトリックに Mr. リオネルの車についてくるよう、Mr. リオネルが現地語で説明していた。そのときに、Mr. リオネルの口から、「ヨボ(現地語で外国人のこと)」という言葉が聞こえた。おそらく、パトリックに「このヨボ(私)を後ろに乗せ、自分の車を追ってくれ」というように指示をしていたのだと思う。私は言った。
 
    "Excuse me, I'm not Yobo."
 
すると、Mr. リオネルは、少し驚いたように、私の肌を見ながら
 
    "You are not Yobo!?"
 
と言った。私は、
 
    "No, I'm Maki. You know my name. I want to be called Maki."
 
すると、Mr. リオネルもクレオパトラも笑っていた。ヨボは単なる外国人の総称で、差別的な意味は無いと分かっているし、彼にも私を侮辱する意図はなかったことももちろん分かっている。だが、彼にはちゃんと Maki と呼んでもらいたい。Mr. リオネルにこそ、Maki と認めてもらいたい。だから、生意気だと分かっていても、そう言った。Mr. リオネルは、笑いながらも、"OK. OK." と言ってくれた。
 その後、銀行に到着すると、これまた偶然にも中にクラリスがいた。Mr. リオネルも驚いていた。クラリスは自分の用事で銀行に来ていたようだ。そして、クラリスは、私が小切手を持っているのを見て、無事に給料をもらえるようで安心したように目配せをした。
 銀行は空いていて、さほど待たなかった。パスポートと、少し書類に記入しただけで、ついに目の前で3ヶ月分の給料をもらった。この日をどれほど待ちわびていたか。
 クラリスは途中で帰ったので、パトリックの後ろにまたがり、1人で帰った。本当に長い、4ヶ月に渡る戦いだった。いや、ベナンに渡る前から話はしていたので、それ以上か。クレオパトラと Mr. リオネルとは少々バトルにもなったが、言い合った後は後腐れなくこれまでの関係に戻った(と思う)のが良かった。後は、私が2月にベナンに戻って来たときにも引き続きちゃんともらえるか。給料に関しては、これが最終章であることを信じている。