新着情報【クラファン終了まであと3日】とヨボの憂鬱と勘違い

 10月25日(金)よりスタートいたしました、私とクラリスラウドファンディングは、多くの皆様のご支援のおかげさまで、11月6日(水)に目標金額であった43万円に達しました。心より感謝申し上げます。また、さらなるご支援のおかげさまで、現時点で、53万5千円にも達しております。本当に連日のご支援に、心より感謝申し上げます。
 皆様からのご支援をとてもありがたく思いながら、このようなお願いをすることも大変申し訳ありませんが、11月25日(月)までは募金を続けさせていただきます。最初の目標金額である43万円に達した今、11月25日(月)までにいただいたお金を全てこちらは受け取ることが出来、より多くの子どもたちを学校に行かせることが出来ます。私とクラリスの夢は「15人の子どもたちを学校に行かせること」ではなく、「1人でも多くの子どもたちを学校に行かせること」でございます。最初の目標金額に達してからも、多くの方にご支援いただきました。いただいたお金は、16人目以降の子どもたちの学費となります。あと3日、どうぞ皆様、引き続き、ご支援、ご協力をお願い申し上げます。
 台風や大雨の被害にあわれた方もいる中で、このようなお願いをしてしまい、大変心苦しく思っております。また、学校関係にお勤めの方にとりましても、行事シーズンでお忙しいときと重なってしまい、大変申し訳ありません。
 本日は1点お知らせがございます。Readyfor のサイト内で、「新着情報」を更新しております。どうぞこちらも合わせてご覧ください。「終了まであと3日です!!」というタイトルでございます。
 
 
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11月22日(木)、いつも通りに研修を終え、オカカエカカノが来るのを待っていた。ちなみに、これだけ送り迎えをしてもらっているのだから、いい加減に彼の名前を聞かねば、と思ったので、つい先日今更ながら名前を尋ねた。パトリックと言うそうだ。パトリックを待っていると、ベリのセキュリティ担当のマニュアシが、
 
    "He is not coming today. His wife had an accident today."
 
と言った。聞けば、パトリックがクラリスに電話をし、クラリスがマニュアシにそれを伝えたらしい。なぜクラリスは直接私に言わなかったのかは分からないが。
 何と、事故だと。今朝送ってもらった際、深刻な交通事故を目撃したばかりであった。しかも、どうやら死者が出るほどの。ベナンでは交通ルールというものが無いため、朝のラッシュアワーにはしょっちゅう事故が起こっている。1週間で2回くらい事故現場を目撃したこともあった。パトリックの奥さんが重症な怪我など負ってないといいが。
 マニュアシに手伝ってもらい、バイクタクシーをつかまえることにした。ベナンの国立大学アボメカラビ大学までの道のりをマニュアシからバイクタクシーに説明してもらえば、そこから先は自分でガイド出来る。価格はいつもパトリックに払っている700セファが一番理想だが、初めてのドライバーならば800セファもやむを得ない。マニュアシに交渉をしてもらったところ、700セファで引き受けてくれた。
 マニュアシは、ベリから10分ほどバイクで走ったところまで連れて行って、そこでバイクタクシーをつかまえてくれた。少しでも距離を縮めて少なくとも800セファで要求をのんでもらえるという配慮なのかな、と思った。
 彼がつかまえてくれたバイクタクシーにまたがり、マニュアシに別れを告げて出発した。アボメカラビ大学までは30分足らず。ようやく見えてきたところで、ドライバーが後ろを振り向きながら、「まだまっすぐ進むのか」とジェスチャーで表したので、私も手でそう示した。10分ほど走ったところで、また同じことをしてきたので、同じように「まだまっすぐ進んでくれ」と示した。すると、ドライバーは現地語で一人言を言い始めた。何だか苛立っている。
 左に折れるポイントが見えてきたので、また手で「左に曲がってくれ」と示したところ、明らかに苛立ってバイクを手で叩き始めた。おそらく、思ったより距離が遠く、700セファに納得がいかないのだろうな、と容易に想像がついた。パトリックは、毎日来る代わりに減額をして片道700セファにしてくれたのだ。このドライバーにはのめる要求ではなかったのだろう。
 しかも、このとき思い出したのだが、今ベナンオイルショックが起こっており、普段1リットル300セファくらいで買えるガソリンが、1000セファまで跳ね上がっているのだ。ガソリンスタンドは人で溢れかえり、バイクも車も凄まじく長い列を作っている。このドライバーは、思ったより長距離でガソリンも使うことになったので苛立っていたのだろう。
 彼に家まで送らせるのは危険と判断した。家を知られると、たかられる可能性がある。100メートルほど手前のところでバイクを止めさせ、1000セファを払おうとしたところ、現地語で何かを訴え始めた。1000セファでも足りないというのか。1200セファならどうか、とスマホの電卓で1200と打ち、見せるとそれでも納得がいかないようであった。明らかに私が外国人だからさらに上乗せしようとしている。
 クラリスに電話をすると、幸い家に帰っていたので、事情を話し、ここまで来てもらうことにした。ドライバーに、「友達が来るからここで待とう」とジェスチャーで伝えると、ドライバーは急に慌てたように見えた。しかも、「乗れ」とまで合図をしている。いやいや、この上さらに乗ってまた増額されても困る。拒否し、「ここで待とう」と伝えた。暗闇の中、クラリスがやって来てくれた。まだ何も始まっていないのに、戦闘態勢に入っているかのようであった。
 クラリスに再度状況を説明した。交渉した値段で納得がいっていないことと、1000セファでも上乗せしようとしてきたことを。するとクラリスは現地語で交渉し始めた。ドライバーも言い返している。
 しばらく2人の話し合いを横で聞いたのち、クラリス
 
    "Do you have 100?"
 
と聞いてきた。要は、1100セファで決着をつけるということだろう。だいぶ高くついたが、早く家に帰りたいし、もうこのドライバーとは話したくない。しかし、ドライバーはまだ納得がいっていないようだった。クラリスは手で、もう交渉しない、というように合図をして、
 
    "Let's go."
 
と言って、私の手を取った。後ろは振り返っていないが、少なくともつけられてはいないようだ。クラリスに事の顛末を聞くと、何と彼は2000セファを要求してきたそうだ。クラリスは現地人では有り得ない価格をどうして要求するのか、と言い返したそうだ。ただ、やはりオイルショック故にガソリン代が高いことを踏まえて、1100セファで決着をつけたらしい。しかも、クラリスも言っていたが、まさか現地人が登場してくると思わなかったのか、彼は少し慌てていたらしい。それも、ただの現地人ではなく、戦闘態勢満々のクラリスが登場すれば、そりゃ誰でもビビる。
 これが外国人の憂鬱だ。街を歩けば、老若男女問わずまず「ニーハオ」と言われ、次に「ギブミーマニー(Give me money)」だ。金だと?こちとら無給である。何ならクラリスに養ってもらっている身である。こっちだって欲しいわい。
 クラリスと買い物に出かけたときも、クラリスが価格交渉をしているにもかかわらず、私を見て高い値段をふっかけてくる。クラリスはそういう人とはそれ以上交渉しない。断じて高い値は払わない。そして、私と一緒に暮らし始めた頃、クラリスはよくご近所さんに、「ヨボ(現地語で"外国人"の意味)のお金で生活しているのか」と聞かれたそうだ。クラリスは朝から晩まで仕事をしているし、繰り返すが私の方が養ってもらっている。
 私と一緒に暮らしていることで、クラリスはきっとご近所さんから見られる目が変わったり、嫌な思いもしたんだろうな、と改めて思った。
 真夜中に変な音で目が覚めた。ボケーっとした頭でよくよく聞いてみると、ドアを叩く音がする。しかも、リビングから寝室に通じるドアの開閉の音まで聞こえる。一瞬にして目が覚めた。何事か。まさかあのドライバーが家を突き止めたのか。すかさずクラリスを起こした。
 
    "Somebody is knocking the door, and somebody is in the living room!"
 
クラリスは寝起きの頭で少し考えながら、何言ってんだこいつ、と言うような顔をして聞いていた。しかも、
 
    "I cannot hear."
 
などと言うもんだから、完全にホラーではないか。私に聞こえてクラリスに聞こえないとは。
 
    "You cannot hear? Somebody is knocking!"
 
と言ったところで、激しく音がしたので、
 
    "Now!!"
 
と言うと、クラリスはやれやれ、と言った感じでベッドから降りた。明かりをつけようとしたが、停電が起こっていた。そこでようやく気がついたが、久しぶりに雨も降っていた。
 私もスマホでライトを照らしながら後に続いた。クラリスは何も恐れることなくリビングに向かった。リビングには誰もいなかった。ホッと胸をなで下ろしたが、ノックの音はやはり聞こえる。ここでもクラリスは何ら恐れることなく、ドアを開けた。すると、一気に風が部屋に流れ込んできた。クラリスは言った。
 
    "This is not the sound of knocking. Because of rain and wind."
 
なるほど。ドアも隙間だらけなので、風が吹くたびにドア自身がガタガタと鳴っていたらしい。寝室に通じるドアの開閉の音も、風によるものだったのだろう。確かに、冷静になってきた頭で状況をよく考えてみると、雨風の音がするし、遠くで雷も鳴っているようだった。
 真夜中の侵入者はおらず、安心したが、クラリスはこんな夜中にヒステリックに起こしやがってと言わんばかりの顔をしていた。
 ヨボを養うことに嫌気がさすいうよりは、ヨボの勘違いで夜中に起こされることに嫌気がさして、「出て行ってくれ」と言われないことを祈っている。