出国前の検査

 10月22日(木)、今日もまた PCR 検査を受けに行く。もうすぐ出国なのだ。PCR 検査は、今回のベナン滞在でストレスの原因となっている1つである。入国時に1回、入国してから2週間後に1回、出国前に1回の、計3回受けなくてはならないのだ。3回で10、000セファ(日本円で2万円)も払った。検査場は遠いし、最初の2回もだいぶ待たされた。しかも、検査を受けるだけでなく、その結果も自分で取りに行かなくてはならないのだ。陰性ならメールで教えてくれよ、と思うが。

 ただ、ここ最近やはりさすがに他の外国人からのクレームも多かったのか、色々改善されているようだ。現金でのやり取りをやめて、支払いは全てオンラインで行われるようになったし、出国者と入国者で検査場を変えるなど、前は一箇所に全員集めていたのに分散することになったようだ。これはありがたい。前に検査を受けたときは、番号札がもはや機能していなかったし、大量に人が並んでいるのになぜか自分はスイスイ進んだし、ちょっとよく分からない仕組みであった。
 改善されているとはいえ、きっと今日もある程度は待たされるだろう。暇つぶしにフランス語の単語帳でも持っていくか。音楽が聴きたくなるかもしれないから、ウォークマンも入れておこう。クラリスにバイクタクシーの手配をお願いして、朝11時くらいに家を出た。
 本当は、朝10時に家を出たかったのにドライバーが遅刻をした。待てど暮らせど来ないので、少し早いがお昼ご飯を食べて行こうと思い、皿にご飯を盛った。いざ食べようとしたそのときに、クラリスから連絡が入り、今ドライバーが到着したとのことだ。
 毎度毎度思うのだが、この国は私の行動を把握しているのだろうか。停電も断水も、なぜか私にとって最高にバッドタイミングで起こる。せっかくご飯をお皿に盛ったので、大慌てで食べ切って、家を出た。
 潮風を浴びながら、バイクタクシーで目的地へ向かった。検査場に着くと、毎度受付のところにいるおじちゃんがまたいた。このおじちゃんは、私がここに来るたびに丁寧に誘導してくれる。私がフランス語も現地語も話せないことを知っている。今日も「お、また君か」というような顔をして、私に挨拶をした。
 日曜日に出国をするので、検査を受けたい旨を告げると、とある場所に誘導された。オンライン化に伴って、現金のやり取りをする手間が省けたのは良いが、オンラインでの手続きの際に支払った証明として表示されるコードを見せて、領収書を発行しなければならないようだ。出国者と入国者の検査場を変えたからか、人もそれほどいなくて、この発行もすぐに終えた。その領収書を持って今度はどこに行けば良いのかを尋ねると、2階だと言われたので、階段を上がった。ここにも人はほとんどいなかった。看護師のおばちゃん達も暇そうであった。受付で検査を受けたい旨を伝えると、暇そうなおばちゃん達が一斉に立ち上がって「こっちこっち」と手招きをしながら私を呼んだ。一瞬たじろいだが、一番近くの検査ブースに入ると、他のおばちゃん達はガッカリした顔をしていた。私は客ではないのだが。あまりにも暇すぎて、検査希望者が来るのを楽しみにしていたのだろうか。
 そしてまた鼻をグリグリといじめられて、涙目になって検査場を後にした。もっと時間がかかると思って色々持ってきたのに、そういうときに限って待たされない。しかし、すぐに済むと思っていたら、とんでもなく待たされる。待っている間に昼ご飯でも、と思うとドライバーがやって来る。ここベナンでは、事は思ったようには進まない。そんなベナンを、また去ろうとしている。潮風を浴びながら、ちょっと寂しさが込み上げてきた。明後日のクラリスの誕生日を一緒に過ごして、また私は日本へ戻る。そうだ、クラリスの誕生日が近い。誕生日会のためのジュースでも買って帰ろう。