新しく始めた仕事(Primary school)

 2月13日(木)、今日も昨日と同じ学校に行く。ただし、今日は primary の方だ。この学校は primary から secondary の一貫校である。同じ校舎に5歳児から18歳までの生徒たちがいるのだ。

 今日は午後の授業を担当するということで、3時に到着した。同僚となった男の先生であるランドリーと教室に向かった。primary の方は、まだ英語が全然通じないため、彼が時折通訳に入るとのことだ。ゆえに、一緒に教えることになるという。
 途中、ランドリーが色々な教室に顔を出して何かを言っていたが、その度に子どもたちが、私がそこに入ってくると勘違いしたのかウワーッと寄ってきてくれたのだが、ランドリーが私が教えるのはこの教室ではないことを告げると、途端に『エーーーーーーーー!!!!!』とガッカリしている姿がかわいかった。
 今日教えることになるクラスに入った。子どもたちが一斉に駆け寄って来てくれた。昨日の secondary でもそうだったが、ベナンの学校では先生が入ってくると子どもたちから先生に挨拶をする。そしてランドリーが、私のパソコンや荷物を置いたりするために、机を前に持ってこようとすると、近くの子どもたちがサッと立ち上がってランドリーを手伝った。小さな体で机を持ち上げているのがかわいかった。
 最初にランドリーが、今日は私が英語を教えるということを子どもたちに伝えていた。そのあとで、私から自己紹介をした。子どもたちは、どでかい声で、
 
    "Hello, Maki!!"
 
と挨拶をしてくれた。
 今日は primary の方なので、子どもたち用の題材を用意してきた。Eric Carle の The Very Hungry Caterpillar だ。私は学生のとき、大学の近くの小学校の外国語活動を担当していたことがあった。そのときにもこの絵本は使ったし、子どもたちに読み聞かせるために英語は全て覚えた。今でも覚えている。
 Eric Carle の絵本の良いところは、絵がユニバーサルなところだ。男の子にも女の子にも受け入れらるし、色が鮮やかで遠目にもはっきりと分かる。かつ、個人的に気に入っているのが、空の色が水色にも見えたり青にも見えたり、葉っぱの色も緑だけでなく、黄緑や黄色が入っていて、子どもたちに色を尋ねると色々な答えが返ってくるところだ。
 また、The Very Hungry Caterpillar の場合は数の数え方や色、曜日や食べ物の言い方も導入出来る。かつ、どの世界の子どもたちにも分かりやすい内容なので、日本の子どもだけでなく、ベナンの子どもにも使うことが出来る。
 私の持っている MacBook Pro は教室に使うには小さすぎるが、幸いアフリカ人は目が良いので割と遠くからでも平気で見ることが出来ている。
 最初に、青虫や果物、子どもたちは興味津々で食い入るようにパソコンの周りに集まって絵を見ていた。
 
    "What is this fruit?"
 
と聞くと、子どもたちは楽しそうに、
 
    "Apple!"
 
と答えていた。ユニバーサルな絵本とは言ったが、梨の pear や plum がベナンには無い果物であるので、papaya や avocado と言っていた。
 The Very Hungry Caterpillar は、子どもが英語を発音しやすいように一定のリズムを持ってチャンツのように発音出来るようになっている。私が歌のようにそれを口ずさむと、子どもたちは早速そのリズムにノリ始めた。何回か発音練習をした後、子どもたちに歌わせて見ると…何と、これが最強にかわいいのである。特に、"... but he was still hungry." のところで、私が腹ペコのジェスチャーをしたのだが、それを真似しているのがこの上なくかわいいのである。初めて見る絵本に、こんなにノリノリになってくれて、これを題材にして良かったなと思う。

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"What is this fruit?" などと子どもたちに問いかけているところ。

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聞いている子どもたち。
 1つ面白かったのが、日本の子どもたちには何の問題も無かったこのチャンツが、ベナンの子どもたちには少しノリづらいのか、彼らは自分たちがリズムにノリやすいようにアレンジをしていた。さらに、さすがアフリカ人、そこにダンスも勝手につけていた。
 この日は、1時間の授業を2クラスで行った。後半のクラスは、前半より少し年長のクラスだが、反応は同じでノリノリであった。ベナンでは、あまり学年と年齢が合っておらず、同じクラスに2〜4歳の年齢の開きがある生徒が混在している。それは、進級テストに受からなかったり、事情があってドロップアウトをした子が戻ってきたりするからだそうだ。後半に入ったクラスには、明らかに1人、身長も圧倒的に高くて大人びた子がいた。その子が少し恥ずかしそうにして教室の端っこにいたのを、他の子が前に座らせようとしていたり、女の子が男の子を黙らせたり、絵本の続きが気になってソワソワしているところとか、本当に日本の子どもたちと変わらないなと思う。こうしていると、日本の学校で教えていたときのことを思い出す。『◯◯先生のクラスの雰囲気に似ているな。』と。あるいは、人種も言葉も全く違うのに、どういうわけか、私の教え子に似た子もいるのだ。キャラというか、仕草というか。ふと、あの子たちは元気だろうか、と思い出した。
  2時間は実にあっという間であった。教室を去るとき、子どもたちがグッバイソングを歌ってくるのがまた強烈にかわいいのだ。もう、反則級のかわいさである。そんなことされたら去れないではないか。ランドリーは早々と去ろうとしていたが、私が去れないのを見て、しばし一緒にその歌を聞いていた。そして、歌い終わると一斉にハイタッチとハグを求めてきた。ランドリーが、
 
    "She will teach you next week."
 
というと、一斉にワーッと喜んでくれた。ランドリーは、2クラスで教えてどうだったかと聞いてきたが、もちろんとても楽しかったと伝えた。この2クラスは来週も教えることになるらしい。子どもたちに喜んでもらえる教材を考えておくのが楽しみで仕方ない。

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休憩中にもひっきりなしに寄ってくる子どもたち。

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前半のクラスでグッバイソングを歌われているところ。