諦めかけていたまさにそのとき

 9月1日(火)、朝から慌てていた。本来なら今日私は、クラウドファンディングで集めたお金でプロジェクトを実行すべく、ベナンに向かう予定であった。ところが数日前に、予定していた飛行機がキャンセルとなり、別の便を探し続けていた。元々取っていたチケットは、適当にネットで買ったもので、返金されるかどうかすら定かではない。だから、今回はもっと信頼の出来る日本のエージェントに頼むことにした。

 ところが、エージェントに電話をしようにも、コロナ禍のせいで短縮営業、さらに土日も休みであったため、未だに新しい航空券が取れていない。だから、昨日と今日で、探しまくっているのだ。コロナのせいで、飛行機のキャンセルが相次いでいる。私が使う予定であったキャセイパシフィック航空もそうだ。エチオピア航空も飛ぶ飛ぶ詐欺があるそうだから、この2つは外した方が良いだろう。となると、トルコ経由か、フランス経由か。
 通常、トルコ経由が一番安い。だが、これもコロナのせいでなのか、トルコ航空の便は希望の日程では飛んでいないそうだ。私はベナンに入ってから1週間ほどは堂々と出歩くことが出来ない。しかし、子どもたちの教材や制服を発注しに行かなくてはならないことを考えると、何としてでも今週中か、来週頭にはベナンに着いていなければならない。そうすると、トルコ経由は諦めた方が良さそうだ。フランス経由は元々高い。こっちも諦めた方が良いのか。ならば、一体どこを経由しろというのか。
 朝から色々なエージェントに電話をかけまくっているのだが、なかなか良いのがない。往復で20万を超えるものがほとんどで、負けてくれそうにもない。まさに諦めかけていたそのとき、ダメ元でかけたところで奇跡的に良いものが見つかった。航空会社は何とエールフランスで、往復18万円台のがあるそうだ。もうここに決めた。高いが、もうこれ以上は出てこないだろう。よくドキュメンタリーや再現ドラマで、「諦めかけていたそのとき...!!」と妙に煽る文言を聞くが、まさにその言葉がピッタリの、逆転ホームラン劇であった。
 ところが1つ問題があった。行きはフランスに一泊しないといけないのだ。ホテル代が痛いが、それでももう仕方ない。無事にチケットの予約を終えた。6日の朝に出発して、同日午後4時くらいにシャルル・ド・ゴール空港に到着する。翌日午後3時にパリを出て、7日の午後8時くらいにベナンに到着するスケジュールだ。
 フランスと言えば、従姉が住んでいるではないか。そうと決まれば、早速電話だ。さすがに身内と言えど、こんな情勢では泊めてくれとは言えないものの、私はフランスは初の訪問となるし、コロナの情勢も踏まえると、ホテルも慎重に選んだ方が良いだろう。色々と教えてもらおうと電話をした。
 幸い、従姉とはすぐに話すことが出来た。事情を話すと、早速電話をしながら検索を開始してくれた。日本では、ホテル業界はだいぶ値下げをしているから、その感覚でいたのだが、フランスは国が保障をしているから、ホテルは強気に出ているそうだ。だから値段も下げていないそうで、パリ市内だと80ユーロくらいからが相場だそうだ。高いが、それも仕方ない。
 電話が終わると、何とすでにホテルから予約完了のメールが届いていた。探してほしいとはお願いしたが、まさか予約までしてくれるとは。しかも、私がフランスに到着する日は、従姉が仕事が終わる時間と私が空港に到着する時間が同じくらいだそうで、従姉の旦那さんも交えて夕食を共にしようということになった。かつ翌日は休みだというので、翌日も一緒に過ごしてくれることになった。従姉は、身内の結婚式くらいでしか帰国をしないので、そうそう滅多に日本で会うことは出来ない。だから従姉に会いに、フランスには絶対にいつか行きたいと思っていたが、まさかこんな形でフランスに行き、再会することになるとは。
 思わぬ飛行機のキャンセルを食らって、一瞬途方に暮れたが、エールフランスなら乗り換えは1回で済むし、従姉や旦那さんにも会える。しかも、エールフランスが往復で20万を切るのは珍しいからラッキーと考えることにした。日本でも感染者が出続けている中、会ってくれるのが申し訳ない気がしてそれを言うと、
 
  『フランスも今7000人とか感染者出てるんだけど、うちらと会うの平気なの?』
 
と聞かれた。聞けば、フランスでは隔離生活対策はうまくいかなかったのか、皆平気でバカンスに出かけているらしい。7000人という数字にはさすがに苦笑いをした。エールフランスは、搭乗前と機内でもサージカルマスク必須だし、街に降りても対策をしっかり行おう。
 お願いです、エールフランス様。どうか、飛ぶ飛ぶ詐欺をして、直前に「キャンセルになりました」なんて言わないでください。