フランスでモーニングとベナンに入れない疑惑とグリグリとゲストハウス到着

 9月7日(月)、時差ボケのためか、朝5時に目が覚めた。昨日、従姉と旦那さんにホテルに送り届けてもらってから、急激に眠気が襲ってきたので、もっと爆睡するかと思った。

 従姉は、たまたま仕事が休みだそうで今日も私に付き合ってくれる。迎えに来てくれるまで、支度をしてホテルで待っていた。
 午前9時くらいに、従姉が来てくれた。向かう先は、美味しいスウィーツを買うことが出来るお店である。従姉に連れて行ってくれと頼んでおいたのだ。フランスと言えば、スウィーツである。着いたお店には、美味しいパンもあり、朝ご飯もまだであったので、ここで買ってどこかで食べようということになった。
 ところが、街を歩いていると何やらオシャレなカフェを発見した。雰囲気に誘われて入ってみると、モーニングセットらしきものがある。結局、先ほど調達したスウィーツとパンは私へのお土産として従姉がくれることになり、ここで一緒に朝ご飯を食べることにした。
 ここのモーニングセットは豪華だった。クロワッサンに、フランスパンに、もちろんジャムもついていて、温かい飲み物に加えて、冷たいジュースまでついてきた。優雅過ぎる。周りを見渡すと、マダムばかり...ではなく、おじさんばかりであったが、まあとにかくただコーヒーを飲みに来たり、本を読みに来たり、おしゃべりをしに来たであろう人ばかりであった。

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フランスのモーニング。

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店内の様子。


 ここで従姉と数時間ばかりぶっ通しでおしゃべりをしていた。従姉とは、身内でもこんな話はしないだろう、というような赤裸々の話をする。しかも日本語だから、堂々と話せるし、聞かれて困る人も周りにはいない。
 気がつくと、そろそろ空港に向かわなければならない時間が来ていた。やはり時差ボケか、急に眠くなり始めた。空港に向かうバスの中は、大爆睡であった。
 空港に着いて、いよいよ従姉とお別れのとき。すると従姉は、トイレに行ってくるだなんて言って、戻って来たときには大量の私へのお土産を手にしていた。スウィーツ好きの私のために、そして何と私だけでなく、クラリスの分も入っていた。絶対渡すもんか、と思ったが、従姉が買ってくれたものだから、素直にクラリスにもあげよう。従姉と旦那さんは、私の滞在にかかった費用を全て負担してくれた。それだけでなく、たくさんのお土産付きで。
 従姉は、最後まで見送ってくれた。出国審査のおじちゃんがマスクをしている上にもごもご喋る人だったので、全然聞き取れず、そこで時間を食ったが、それも見届けていてくれた。見えなくなるまで手を振ってくれていた。
 急に寂しさが込み上げた。色々な不安や心配を抱えながら日本を発ったが、何だかんだ言って、フランスに行って従姉と会っているときはリラックスしていたし、楽しんでいた。しかし、ここからはもうベナンに向かうのだ。日本では、ベナンの状況があまりよく分からなかった。大使館から届くメールでは、もはや感染者数は明らかになっていないようだったし、クラリスに聞いても、現地人が感じる状況と外国人が感じる状況は異なる。クラリスから見て、特に変化は無いと言っていたが、外国人を取り巻く状況は分かるまい。見た目には中国人と変わらない私に対して、心無い差別など起こり得るのだろうか。あの能天気というか、穏やかで面白いベナンが変わりつつあるのだろうか。それが怖かった。自分は、本当に歓迎されるのだろうか、と。
 不安の中、搭乗を待っていた。自分のゾーンの順番になったので、列に並ぶと、何やら人々がスタッフにスマホを見せている。一体何を見せているのか。自分の番になると、お姉さんに、
 
     "Show me your result of the test."
 
と言われた。はい...?結果とは、もちろん PCR 検査結果のことだろう。ベナンでは、入国時に全員 PCR 検査を受けることが義務付けられている。だから、入国してから受けるのでは?なぜ今見せるのだ?しかも、事前に得ていた情報では、日本で検査を受ける必要などないはずだ。そう説明をすると、
 
     "So you should have the QR code."
 
と言われた。はい...?QRコード、とは。それをさっきから他の人は見せていたのか。しかし、私はそんなものが必要だと聞いていなかった。ところが、このコードを見せないとベナンに入国は出来ないと言う。ここまで来て、入国拒否か。フランスから引き返せというのか。スタッフは2人いたが、他の客をさばいていて忙しそうだ。しかし、こっちだって緊急だ。QR コードとは何ぞや、一体どこで手に入れれば良いのか。スタッフに聞く機会を伺っていると、とうとう最後の数人となった。英語で説明をされているが、あまり英語が得意でないようだ。ちょっと何を言っているのかが分からなかった。スタッフ数人がかりで、フランス語の翻訳機を使いながら、どうにかサイトにたどり着いた。そこから、入国する日やパスポート情報など、必要事項を入力していった。気がつけば最後の一人となっていた。こんな手続きが必要だなんて、聞いていない。どうやら、この QR コードが無ければ、ベナンの空港で検査を受けることができないそうだ。
 スタッフの助けを借りながら、全て入力を済ませて、やっと QR コードを手に入れた。スタッフに、"Good job." と言われながら、小走りで機内に向かった。私が最後の乗客だろうか。と思いきや、私の他にもまだ QR コードの取得に苦戦している人がいて、安心した。
 ベナンに向かう飛行機は、割と混んでいた。ベナンはフランス語圏なので、フランスにベナン人がいてもおかしくない。シスターやビジネスマンぽい人が多かった。また列を独占、というわけにはいかなかった。
 飛行時間は6時間ほどで、ベナンに着陸した。さて、一体どんな PCR 検査が待っているというのだ。また鼻をグリグリされるのか。しかも、ベナン人がやると何だか容赦も無さそうだ。
 ベナンでは、入国時に PCR 検査が義務付けられている。この検査で陰性であれば、まあまあ普通の生活はして良いのだが、2週間後にまた受けなくてはならない。合わせて費用は100、000セファなので、日本円で20,000円ほどだ。もちろん、自費である。
 降りると、列に並んでまず検温をすべく体重計のようなものに乗った。その間、上から何かが噴射されている。アルコールだろうか。そして、その噴射を浴びながら、ビニールカーテンを潜り抜けると、建物に通じていた。その建物には、たくさんの椅子が置いてあった。入ってきた順に、椅子に座らされた。壁に沿って、20個近くのブースがあって、そこで検査を行なっているようだ。椅子に座っていると、スタッフがやって来て、QR コードを見せるように言われた。すると、スタッフのスマホでそれを読み取って、前方にあるモニターに番号が出る。そして、その番号によって、私がどこのブースで検査を受けるかが決まるようだ。私は、8番ブースに案内された。意外とちゃんとした仕組みではないか。もっとアナログだと思っていた。待ち時間が長いだけだ。着陸してからここまでで30分は待っている。
 そして、ここからが恐怖のとき。一体どんな検査をされるのか。名前と生年月日を確認すると、綿棒みたいものを用意し始めた。これでまた鼻をグリグリするのか。これだけ医療の進歩は目覚ましいのに、それでもこの鼻グリグリの屈辱的な検査が必要なのか。まあ、注射よりマシだ。大人しく鼻を上に向けたが、看護師は何と、
 
     "Open your mouth and say Ahhh."
 
と言った。何と、その綿棒を口に入れるのか。半信半疑で口を開けると、思いっきり突っ込まれて、グリグリされた。むせそうになると、
 
      "Say Ahhhhhh."
 
とまた言われた。これはこれでまた屈辱だ。「アーーーー」と言いながら、早く終わってくれと念じた。涙目になっていた。これでもう終わりだ、と思っていると、看護師の手には信じられないものが握られていた。これは、はて、一体何に使うのだ。それは、私が嫌いなものランキングベスト3に入るもの、注射であった。厳密に言うと、注射ではない。もっと短い針だ。右手の薬指を出すように言われた。もう好きにしてくれ。泣きそうであった。ブスッと音がしたような気もしたが、ほんの1秒で終わった。出血があったので、コットンで抑えるよう言われたが、やはり気づくと泣いていた。さっきの喉グリグリも痛かったし、何よりこんなところで針をぶっ刺されるなんて聞いていない。心構えも出来ていなかった。誰もそんなこと教えてくれなかった。ぐすんぐすんと言いながら、礼を言って席を立った。次に、結果が出るまでまた別の席に誘導された。ここで陰性だと分かると、ようやく出国審査に向かうことが出来る。ここからまた30分ほど待って、スタッフがやって来た。スタッフのスマホに、検査結果が送られているようだ。パスポートを見て、スタッフが自分のスマホで検査結果を探す。そして、陽性か陰性かを伝えられるのだ。
 幸い、私の前の人までで陽性者はいなかった。私の番になって、お姉さんが私のパスポートを見ながら結果を探した。すると、
 
     "Did you get the test?"
 
と聞いてきた。もちろん、と答えると、
 
      "When and where? I cannot find your result."
 
と言われた。おい、何てことだ。意外とちゃんとしている、なんて思ったが、全然ちゃんとしていないではないか。私は確実に受けたし、パッと見、アジア人の女性なんて私だけだ。8番ブースに行けば看護師は絶対に私を覚えているはずだ。30分前くらいに8番ブースで受けたことを伝えると、お姉さんは看護師さんのところに行き、確認してくれた。そして、私のところに戻ってきてこう言った。
 
     "They forgot to send the results. You can go. You are negative."
 
良かった。最後の難関をクリアした気分だ。ここまで来れば、何も問題は起きないはずだ。
 荷物検査も通って、いよいよ空港の外へ出た。ここに、クラリスがいるはずだ。空港では Wi-Fi がなぜか入らなくなっていたので、クラリスと連絡を取ることが出来ない。しかし、事前の約束で、クラリスはこの時間に空港で待っていてくれているはずだ。あと、シェリーココ代表の莉穂さんから、シェリーココの現地人スタッフにあるものを渡すよう言われているので、その子も一緒に待ってくれていた。着陸から1時間半程待たせてしまった。2人は、私の到着をとても歓迎してくれた。クラリスも変わらずであった。ちゃんとマスクをしていたのが、何だかかわいかった。
 待たせたお詫びとして、フランスから持ち帰ったスウィーツやパンは、2人にあげることにした。とても喜んでいた。その後、クラリスと私はタクシーに乗り込んだ。
 実は、私とクラリスはよりセキュリティのしっかりとした家に引っ越すことにしたのだ。今後、お金の管理ももちろんだが、購入した子どもたち用の品を厳重に管理するためだ。その家への引っ越しが、私の到着までに間に合わなかった。また、かと言って陰性であるのにホテルに滞在すると高くついてしまうため、クラリスが私が到着するまでに色々と考えてくれて、何と Mr. リオネルが経営しているゲストハウスにタダで泊めてくれるということになった。Mr. リオネルとは、私が勤めるビジネススクールの校長先生だ。クラリスの恩師でもある。ゲストハウスを経営しているなんて、知らなかった。しかし、タダで泊めてくれるとはありがたい。
 タクシーで向かう途中、日本での生活の様子、フランスで従姉と会ったこと、今後の予定などを話した。クラリスも、クラリスお姉さんたちも、皆元気で暮らしているようだ。
 ゲストハウスに到着すると、入り口前に手洗いをする場所が設けられていた。そして、その上には何やら見慣れたものが置いていた。「ハトムギ化粧水」と書かれていた。こんなところで日本語を見ると思わなくて驚いた。Mr. リオネルは、大の親日家である。どういうわけか、日本製品を手に入れたのか。しかし、アルコールだと思って設置したのだろうか。ここに入る人間は皆、これをアルコールだと思い、手が清潔になっていると思っているならば、何だか面白い。

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ハトムギ化粧水。
 クラリスが部屋までついてきてくれた。そして、スタッフに命じて明日からの3食分の手配もしてくれた。新居への引っ越しは、木曜日になるそうだ。それまでは、ここでステイホームである。

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お部屋。
 さすがに少し疲れた。シャワーもトイレも部屋についているし、十分にお籠り出来そうだ。残念ながら、このゲストハウスに Wi-Fi は入っていないようで、いつも使っている Wi-Fi モデムの契約も明日クラリスがしてくれることになっている。無事に到着していることを家族に知らせることが出来ないのがもどかしいが、明日電波が入り次第送ることにしよう。

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従姉からもらったお土産。その他にも、チョコレートやグミやらアメやらももらった。

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再会したクラリスと。