プロジェクト始動まであともう少しと女性の力と例え私が...でも

 10月1日(木)、もうすぐプロジェクトが始動する。緊張してきた。当初の予定より、ものすごく大規模になってきた。

 私とクラリスが昨年行なったクラウドファンディング、そしてシェリーココ代表の莉穂さんとコラボして行なったクラウドファンディング、この2つのクラウドファンディングだけでも大金が集まったというのに、それ以降、個人的にお金をいただくことが続いた。また、クラリスの伝手で、ベナン国内の団体からも大量に教材が届いている。

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クラリスの伝手で届いた教材。

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クラリスの伝手で届いた教材。

 そこで我々は、元々予定していた支援先 Cove(コヴェ)の他にも Akassato(アカサト)というエリアでも支援をすることにした。当初の予定では、莉穂さんとのクラウドファンディングで入ってくるお金で、別のエリアの子どもたちを支援する予定でいた。プロジェクトを分けた方が良いと思っていたのだ。そのつもりで、クラリスは色々な学校の先生と繋がり、相談もしていた。ところが、やはり色々とあって Cove に絞ることになったのだが、結局9月に入ってからも色々なところから支援金が入り、教材も届いているので、クラリスは以前連絡を取っていた他の学校との縁も大事にしたいと思い、エリアを1つ増やすことにしたのだ。

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赤いピンのところが Cove(コヴェ)。私たちが住んでいるのは、Cotonou(コトヌー)付近。

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赤いピンのところが Akassato(アカサト)。
 予定では、10月5日に Cove に向かう。約1年前にも訪れた場所だ。そして、7日に Akassato だ。この2日間で我々のプロジェクトは終了する。色々と精神的にも疲れてきた。あと少しだ。

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クラリスが作ってくれた宣伝用のチラシ。
 クラリスは朝から晩までがっつり仕事をしているので、打ち合わせは夜に行なっている。話していると、つくづくクラリスがパートナーで良かったと思う。もし、同じベナン人でもクラリスではなかったら、もっと色々なトラブルがあったと思う。交渉力は抜群にあるし、大方の支援者は日本人なので、日本人の考え方や気持ちも汲んでくれる。お金だけ渡す支援ではなく、ちゃんと支援者の思いも届けたい。
 そして、私自身が本当にこのプロジェクトを誇りに思うのは、クラリスがパートナーであることと、現地人のクラリスがしっかりリーダーとなっていることだ。いつまでに何が必要で、何をしたら子どもたちが喜ぶか、CHILDREN EDUC の未来を考えると、今どういうアクションが必要なのかをクラリスが次々に提案をしてくる。私からクラリスのお尻を叩いて何かをやらせたことは一度たりとも無い。
 ただでさえこのように思っていたのに、今日また、クラリスが嬉しいことを言っていた。私たちのプロジェクトには、色々な人が関わっている。しかし、現場で先頭となってこのプロジェクトを進めているのは私たちだ。アドバイスをくれたり、手伝ったりしてくれるのは大変ありがたいことだが、私たちは、実際の行動は私たち2人でやることにこだわりがある。それはなぜか。
 ベナンでも女性の地位は非常に低い。女の子は家事をやるものという考えが根強くあって、ビジネスを始めたり仕事で外に出かけることはあまり良いことだと思われていない。しかも、大事なポジションに女性が任命されることも少ないそうだ。日本でも、だいぶ変わってきてはいるが、それでも女性が先導して何かを推し進めることにくだらない茶々を入れてくる人はいる。
 今回のプロジェクトは、クラリスが知る限りでは、ベナン国内で女性だけでやるプロジェクトとしては他に類を見ないし、何しろ支援先が Cove というのも、誰の援助も入っていないという意味で、私たちがパイオニアとなる。クラリスが言った嬉しい言葉というのは、
 
     "We will show that women can change the world."
 
である。私はこの言葉にとても感銘を受けた。クラリスとは、こういう考えを持っているところが本当に似ているなと思う。嬉しかった、本当に。ベナン人だろうが日本人だろうが、世界を変えたいと思っているのは変わらないということだ。
 さて、そろそろ寝ようということになった。すると、あることに気づいた。ここ数日、上の階から何やらドリルで穴を開けているような音や、トンカチで何かを叩く音が聞こえており、住人がやっていたとのことだ。それが、夜10時以降になっても続くから私たちは気になっていたのだ。クラリスは相当イライラしていた。
 ところが、今日は聞こえない。だから私が、
 
     "Nobody is disturbing us today."
 
と言ったら、何とクラリスは、家のオーナーに言ったのだそうだ。ここのオーナーは本当に良い人で、外国人の私のことをよく心配してくれているそうだ。オーナーから住人に、夜遅くにやるのは止めるよう言ってくれたのだろうか。クラリスのこういうところも本当にすごいなと思う。クラリスは、自分たちの寝る権利をしっかり守ったのだ。また恐喝みたいな電話をしたのだろうか。
 シャワー室に向かいながらも、まだクラリスはこの数日睡眠を妨害されたことに文句を言っていた。
 
     "They have to respect me even if I am a woman!"
 
と。女だから妨害されていることはないだろう、と思ったが、そうだね、と相槌を打つとさらに、
 
     "They have to respect me even if I am single!"
 
と言った。独身かどうかは絶対に関係ないと思う。でも、これも笑いながら、そうだね、と相槌を打つと、
 
     "They have to respect me even if I am fat!"
 
と言い放ち、シャワー室の扉をバタンと閉めた。本当にこの子は面白いなと思った。