前髪
8月29日、旅行から帰った我々はやはり相当疲れていたのか、遅くまで寝ていた。ということで、結論から言うとこの記事はとてつもなく短い。
ノソノソと起きた2人は、リビングのテーブルに向かい合って座って朝ごはんを食べても、会話らしきものはなかった。
先に沈黙を破ったのはクラリスだ。彼女は私の顔をじーっと見た後、
“Maki, let me cut your hair.”
と言った。
実は、ベナンに来る前に髪の毛を切ってきたのだが、やはり1ヶ月の滞在で前髪が伸びてきたので、そろそろ切らねばならないと思っていたのだ。クラリスのお姉さんはヘアドレッサーで、髪の毛を切ることも出来るので、私は彼女にお願いしたいと思っていた。クラリスからも頼んでもらっていた。近々切ってもらう予定だった。
それなのに、どうしてだ。なぜ、クラリスが切る。ポカンとしていたら、あっという間にクラリスはハサミを手に私の前に立っていた。クラリスがハサミを持つときは要注意だ。またいつぞやのジーンズのようにダメージされかねない。私の前髪もダメージする気なのか。しかし彼女はとても嬉しそうだ。切らせて、切らせて、とお願いしている。
ええい、もうどうにでもなれ。どうせここでは日本のファッションやオシャレなど通用しない。クラリスが良いと思ったように切らせよう。そして任せるならば絶対に文句を言わないようにしようと覚悟を決めた。
しかし一応未練がましく、ここくらいまでね、と希望だけは伝えておいた。私は、前髪はパッツン派なので、眉毛くらいで切り揃えてくれ、と。
“OK. Close your eyes.”
と言われたので、もはや自分の前髪がどうなっているかも分からなかった。ただただ、ザクッザクッという音がしているだけだ。終わったよ、と言われたので鏡を見ておったまげた。
ちびまる子ちゃんではないか。あるいは、私が多用するLINEのスタンプのキャラクターにもこんなのがいる。私が言った希望は微塵も受け入れてもらえなかった。しかも全くと言っていいほどに切り揃えられていない。あまりにもちびまる子ちゃん過ぎて、クラリスが似せて切ったのかと思った。だとしたら相当の腕前だ。
一瞬顔は青ざめたものの、文句は言わないと決めたし、髪の毛なんてどうせまた生えるし、何よりクラリスが、
“You are too beautiful!!”
と言うのでもう良しとしよう。ただ、さすがにガタガタすぎるのでこの後自分で切り揃えておいた。