疑惑と突然のプレゼン

 9月19日、実は昨夜また発熱した。今朝は熱は下がっているものの、ダルさや頭痛が残っている。当然疑われるのは、マラリアの再発である。マラリアの厄介なところは、治ったと思った頃に再発する可能性があることだ。しかも、私は調子に乗ってマラリアのことを「マラリン」などと呼んでいたため、バチが当たったのだろう。

 しかし、今日は絶対に外せないミーティングがある。朝雨も激しく降っており、大嫌いな雷も鳴っており、最悪のコンディションの中出かけた。バイクタクシーをつかまえるために外に出ると、ご近所さんであり、クラリスの友人でもある人が車で送ってくれることになった。すると、体調不良ゆえのものか、それとも元々の気質のものか、ボケーっとしていたため、車に乗り込む際に激しく車内で頭をぶつけた。クラリスの友人は、「どうしてそんなところで頭をぶつけるんだ」と言いたそうな信じられない顔で私を見ていた。おかげで今、頭痛がするのだが、それが病気のものなのか、ぶつけたからなのかが分からない。
 ミーティング場所に到着した。実は、出かける直前に私の雇い主であるリオネルさんから電話をもらっていた。初めて会う人もいるので、私の自己紹介や経歴などを説明してもらうとのことだった。体調不良のことは言わなかったが、単に少し緊張していたので、不安である旨を伝えたところ、そこから延々10分ほど、リオネル節が炸裂した。
 
    "You are a teacher. You should be proud of yourself. Students will be worried if they see you who are not confident. You gave up your rich life in Japan and decided to come here, right? Hey Maki. Be confident. Be proud of yourself. OK?"
 
あまりにもマシンガントークであったため、覚えているのはこれくらいだ。いつものことながら、リオネルさんが話しているときは私は一切口を挟む余地がない。OK, OK. と言うので精一杯だ。そして、喋るだけ喋り通したリオネルさんは、
 
    "OK? Then see you."
 
と言ってガチャンと電話を切った。自分もなかなかのマイペースであると思っていたが、彼のマイペースっぷりもさすがである。
 さて、いよいよ私がお世話になる人たちと対面した。何人かはすでに以前会ったことがある。車の中で激しく頭をぶつけた私は、より一層働かなくなった頭で精一杯自分のことを話した。何の準備も出来ていなかったが、和やかな雰囲気に助けられて、まずまずのプレゼンが出来たと思う。特に強調したことは、
 
    "I would like Beninese students to open their mind to the world as a global citizen."
 
ということである。アフリカのことやベナンのことだけでなく、グローバルな視野で勉強してほしいということだ。同じ考えを持っているベナンの先生方しかいないので、非常に共感してもらえたことが嬉しかった。
 さて、帰宅をするとより一層体に異変が生じていることに気がついた。明らかにまた発熱している。クラリスが仕事から帰ってくるまで寝ていると、一旦は下がるのだが、スッキリしない。微熱がずっと続いている感じだ。明日の朝イチで病院に行くことにして、不安を抱えたまま眠れぬ夜を過ごした。