初詣

　１月３日（金）、年末から年始にかけても怒涛のように出稼ぎをこなした私は、先月うちに遊びに来てくれた友達 Ｋ と Ｌ と初詣に出掛けることにした。場所は港区にある愛宕神社で、仕事運アップのご利益があるとか何とか。３人とも３０代の働き盛りだし、何より私は給料未払い事件があっただけに、仕事運はつけておこうと思ったのだ。

     愛宕神社に到着すると、何やら階段が見えた。愛宕神社は石の階段があることで有名である。振り返らずに一心不乱に登ることで、出世のご利益があるらしい。ということで、３０代の男女３人はぜえぜえしながら登った。

　登り終えると、すでに参拝客が列をなしていた。あまり並ぶのは得意ではないが、３人で話していればあっという間であろう。そして、３人は気がついた。何やら自分たちが登ってきた方とは逆方向から人がやって来ていることを。どういうことだ。入口が複数あるというのだろうか。とりあえず、自分たちが今いる場所は、間違いなく愛宕神社であるし、疑問には思っていたものの、誰もそれ以上は突っ込まないでおいた。

　愛宕神社は、オフィス街にある。並んでいると、高層ビルばかり目につく。あのマンションが自分の家だったら良いのにね、とか、３人の年収足してもあのマンションには住めないだろうね、とか話していたら、あっという間に自分たちの番になった。

　とりあえず、給料未払い事件などがもう起こらないことと、健康第一にということを祈っておいた。ベナンで暮らすにあたって、当たり前だがまずはお金がないとやっていけない。そして、そのお金を稼ぐ体が健康でなければならない。生きている場所がベナンだからといって、特別必要なことはさほど無い。

　無事にお参りも済ませた後、L は御朱印があるので、K と私も何かお土産を買おうかという話になった。お守りも、ここ何年も買っていないから良い機会だ。どれにしようか、と悩んでいると、K も L もすかさず、

 

　『茉季（私のこと）はこれで決定でしょ！！』

 

と言って、あるものを見せた。確かに、私にピッタリ過ぎて、言葉も出なかった。今すぐにではないが、いずれベナンで一人暮らしをしようと思っている私には最適だ。ベナンは、治安は悪くはないが、日本人というだけで金持ちに見られるので、狙われる可能性は大いにある。L に、

 

　『漢字の意味が分からなくて珍しいから、逆にこれが取られるかもね。』

 

と言われた。なるほど、あり得る。しかし、お金や命ではなく、これを盗っていってくれるならば、このお守りの効果は十分に発揮しているということになる。家に帰ってすぐに、ベナンに持って帰るスーツケースの中に大事に入れることにした。

愛宕神社で買ったお守りと。

　私はおみくじで無事に大吉を引き、一行はその後、お昼ご飯を食べるために神社を出ようとして、人の流れに従って出口に向かった。そして、ようやく我々は気がついた。私たちが入って来た場所は裏口のようなものであり、有名な石段ではなかったということに。神社を出たところに、それらしく立派な石段がちゃんとあった。裏口にあったしょぼい階段をご利益のある階段だと思って念じながら登って来た３人は、さっき以上に念じながら本物の石段を下り、終わり良ければ全て良し、とした。

帰りに寄った水道橋のムーミンカフェにて。