ベナンドレスで結婚式と便利屋さん

 1月26日(日)、今日は待ちに待った友達の結婚式である。かねてからこの Blog でも書いてきたが、私はメイドインベナンのドレスで参列するつもりである。クラリスのお姉さんが作ってくれた、あの赤いドレスである。

 ドレスやアクセサリーの準備は万端だったのだが、実家にカツラを持って行った際に、持って帰るのを忘れてしまった。カツラは完全に盲点であった。何のために作ってもらったのか。まあ良い。カツラはベナンで楽しむことにしよう。
 昨日から姉が泊まりに来ている。前回の Blog で友達 M が最後のゲストだと記したが、図らずも最後のゲストは姉になってしまった。
 式は昼過ぎからなので、午前中に早起きをして引越しの準備をした。ここ数日、ほぼ徹夜でやっているのだが、マンションゆえに夜中にあまりドタバタと音を立てるわけにもいかず、大きなものはまだ片付いていないのだ。
 午前中から大急ぎで、真冬だというのに汗だくになりながら荷物を詰めていった。姉はまだ寝ている。割と大きな音を立ててガシガシと詰めていった。姉はまだ寝ている。まあいい。あとで叩き起こして、私のヘアアレンジをさせるのだ。先日の講演会のときにも姉に頼んだのだが、姉はまあまあ上手にヘアアレンジが出来るので、美容院に行く必要もない。
 軽く昼を食べ終えて、ドレスを着た。先日の講演会で着たドレスは、そもそも寸法通りに作られていないので着るのに相当苦労したが、このドレスはクラリスのお姉さんが寸法通りに作ってくれたのでピッタリだ。体型がやや変わってもちゃんと入った。
 無事に姉に髪の毛もセットしてもらって、家を出た。真冬なので、ファーのコートを着ているためドレスの全貌は分からないが、やっぱりチラチラと異国の雰囲気を漂わせているのは間違いない。何だかすれ違う人に2度見されている気もする。
 友達と待ち合わせをして、式場に向かった。漢字を書くのも久しぶりで、震えた字で書いたお祝儀も無事に渡すことが出来た。会場の中でも、やはりちょっと目立っていたような気はするが、悪い目立ち方ではなかった(気がする)。
 結婚式に出席するのは、まあまあ久しぶりだ。30歳に近づくにつれて、結婚式が続いたときもあったが、私の周りは独身も多い。というか、自分もそうである。昨今の結婚式はオリジナリティに溢れていて、興味深い演出があったり、ゲストへの配慮が多いにあったり、出席するのはとても楽しい。食事も美味しいし、ちょっとリッチな気分も味わうことが出来る。こんな豪華なフルコースを堪能でき、飲み物も好きなだけ飲めるだなんて、クラリスに話したら…やめておこう。どうせまた、嫌味を言われるだけだろう。

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ベナンドレスで記念撮影。
 式が終わると、私は駆け足で会場を後にした。人が来るのだ。ゲスト、ではない。引越しのため、家具を粗大ゴミとして出すのだが、私が住んでいる某23区は引き取りはしてくれるものの、マンションのエントランスまで運ぶのは自分でやらなければならない。本棚とベッドを出すのだが、当然自分では運べない。ということで、色々調べた結果、初めて「便利屋さん」を使ってみることにした。依頼の仕方は至ってシンプルで、一括サイトに案件を挙げると、何人かの便利屋さんから応募がある。値段交渉をして、納得がいく人をこちらが選べるという仕組みらしい。シンデレラのごとく、ヒールで大急ぎで走りまくって家に帰った。少々遅れてしまったのだが、便利屋さんはマンション前で待っていてくれた。待たせてしまったことを詫び、自分が依頼者であることを告げると、おそらく私の出で立ちを見て驚いたのか、
 
 『えっと、仕事帰りですか?』
 
と聞かれた。そんなわけなかろう。友達の結婚式帰りであったと言うと、納得していた。早速家に入れ、私は素早くトイレで簡易的に着替えた。運んでほしいものを教えると、便利屋さんは実に手際よく運び出してくれた。この便利屋さんに依頼して良かったな、と思ったのは、捨てるとはいえ、ベッドと本棚は幼少期から使ってきた思い出のある家具だ。それを実に丁寧に扱ってくれたし、もちろん部屋の中を傷つけることなく依頼を遂行してくれた。引越し業界にいたこともあるというので、プロなのだから当たり前なのだが、ずっと使ってきたベッドと本棚が慎重に運び出されていく様子を見て、少し寂しく、切なくなった私の心も和らいだ。
 ものの数十分で無事にベッドも本棚もエントランスまで運んでくれた。あとは、業者が回収に来てくれる。丁重にお礼を言うと、少し雑談が始まった。というか、便利屋さんという職業に私が興味を持ち、根掘り葉掘り色々聞いたのだ。世の中色々な依頼があるのだな、と聞いていて興味深かった。この後私が忙しくなければ、もっと聞いていたかったと思うほどだった。ちなみに私のことは、大学生だと思ったそうだ。就職と共に引越しをするのだと思ったそうだ。
 
 『いえ、ちょっと海外に…。』
 
と言って、ベナンの話になるとたいそう驚いていた。
 便利屋さんが帰って、部屋を見渡すとベッドも本棚も無くなって、部屋の様子が一変した。いよいよ、もう本当にこの家に戻ってくることはないのだな、と思った。