銀行とアレ

 9月5日、今日は銀行に行かねばならない。日本から持って来たVISAカードでお金を下ろすのだ。ATM で出来るとのことなので、お金はすぐに引き出せると思っていた。

 ところが、1店舗目で早速私のVISAカードはお金を引き出すことなく戻って来てしまった。クラリスがお店の人に色々尋ねてくれるも、何度やってもダメだった。お店の人が別のお店で試すよう言ったので、2店舗目に向かった。全く同じ展開であった。行けども行けども私のカードは拒絶される。ちなみに念のため言っておくが、ブラックリストに載っているわけではない。残高もある。事実、普通のスーパーでは私のカードで買い物が出来たのだ。引き出すお金を少額にしても出来なかった。何軒回っただろうか。そのうちの何軒かでは、ガードマンに
 
    "I love you."
 
と言われた。行けども行けどもお金が引き出せなくて焦っていた私は、クラリスに、
 
    "If I married him, could I get the money from him?"
 
と聞いてみた。銀行で働いているのだから出来るかなと思ったのだが、クラリス
 
    "Yes, but you have to give him your card information."
 
と言った。確かにそうである。あまりにも現実的なリスクなので、この計画はやめることにした。
 何かが合わないのだろう。結局、どこの銀行でも出来なかったので別の手段を考えなければならない。
 帰り道、バイクタクシーに乗っていると、頭痛を感じた。家に帰ってからも治らなかった。知人には、晴れている日に長時間バイクタクシーに乗り続けて排気ガスを吸いまくっていたからではないか、と言われた。確かに、ベナンは風は吹くが日差しは強い。日本の何倍も紫外線は強い。こんな中ずっとバイクタクシーに乗っていたのだから、熱中症のようなものを引き起こしたのかもしれない。ましてや、車もバイクもすごい数なので、排気ガスを吸いまくっていたのは頷ける。
 ところが、夜になると体が異常に熱くなった。明らかに熱が出ている。ここで、私はある可能性を疑った。
 
アフリカに行くならば一度はかかるだろうなと覚悟していた、アレ。
日本では不治の病並みに恐れられているが、きちんと薬さえ飲めば治る、アレ。
でも絶対かかりたくない、アレ。
 
しかも心当たりがある。
 
学生さんたちと行ったツアーで泊まった宿で、寝ようとしていた私の手と足を刺したアイツ。
退治し損ねたのが今になって本当に悔やまれるアイツ。
睡眠を妨害しただけでなく、潜伏期間が長いために今になってまたその存在感を見せつけるアイツ。
 
もしアレならば、自然治癒は出来ないので病院に行かねばならない。明日クラリスに連れて行ってもらうことにして、この日は早々に寝た。