高橋大輔

 9月26日、感染症からもすっかり回復したようだ。薬はまだ摂取しなければならないが、体の不調は一切無く、モリモリ食べてゴリゴリ寝ている。

 朝からとんでもないニュースが姉から届いた。姉も私も、自他共に認めるフィギュアスケートオタクであるのだが、我々が敬愛してやまないフィギュアスケーター高橋大輔が、何と男子シングルからアイスダンスに転向するというのだ。彼は、ソチオリンピックの後に一度は引退をしたものの、昨年再び競技の世界に戻った。それだけでも私たち姉妹は飛び上がって喜んだ。昨季は結果を残し、今季も楽しみにしていた。そこに舞い込んで来たこのニュース。何という驚き、そして嬉しさ。
 この Blog はベナン生活について綴るものなのに、なぜに高橋大輔、と思った方もいると思うが、もう少し待っていただきたい。どこかでベナンと関連づけるつもりである。
 そもそも、私が高橋大輔を好きな理由、それは、彼がとても人間臭いからだ。演技中、肝心なところで転倒したり、時には何の技もしていないときに転ぶこともある。少々不器用なのだ。見ている側からすると、『あ〜!!何でそこで転ぶ!!』と毎度思う。応援している身としては、彼にメダル、しかも金メダルを取ってもらいたいと思う。だからこそ歯がゆい。溢れんばかりの才能を持っていながら、自らを険しい道に放り込み、もっと楽な道を選べるのに彼はそれを選ばない。点数や順位を上げることを考えれば、ジャンプの難度を落としたり楽な構成にすることだって出来るのに、彼はいつも自分がやりたいことを貫く。毎シーズン、新たな挑戦を自分に課し、昨季と同じようなことはやらない。だからこそ苦しむのは目に見えているのに、彼はその道を選ぶ。毎シーズン、『昨年のプログラムを超えられるものを作れているのか…』と思うが、必ずそれを裏切って彼は最高のものを作り上げてくる。何度も取れるはずのメダルを逃したが、だからこそ『もう一度見たい』と思わせてくれる。完璧じゃない人間が、完璧の演技を目指し、なかなかそこに到達しない。エンディングのないドラマを見ている気分になるのだ。
 一時期は、彼が世界の男子シングルの王者に君臨していたことがあった。あのときは彼を超える人など当分現れないと思った。しかし、人間はやはり進化する。彼に追いつくためにあらゆる若手がしのぎを削って4回転や他の高難度の技を得た。そして今は、もはや4回転などは当たり前で、4回転半や5回転に挑戦している選手もいる。昨季、現役復帰をしたとき、彼は分かっていたはずだ。今や自分より下の世代が完全に王者の地位を保ち、現行ルールでは勝てないことを。30歳を過ぎて、また競技のための体づくりをすることがどれほど大変なことかを。それなのに彼は競技の世界に戻って来た。何も知らない人からすると、「キレイに引退することも必要だ」「負けることが分かっていてなぜ戻る」「イタい」と思っただろう。勝つことや潔く引退することも、1つの価値観として「キレイ」である。しかし、何歳になっても挑戦し続けることもまた「キレイ」なのではないか。負けてもなお、清々しく「やって良かった」と思う彼の生き様を私は心から「キレイ」、いや「カッコイイ」と思っている。ましてや今回、シングルからアイスダンスに転向するという。全く違う競技とも言えることに、彼は挑戦しようとしている。尋常ではない努力をして金メダルを取ることが「キレイ」ならば、尋常ではない努力をして新たな領域で挑戦することだって等しく「キレイ」なはずだ。
 このニュースを知り、私はとても勇気をもらった。30歳を過ぎて、学生の頃から抱いてきた夢を実現するためにアフリカに渡るだなんて、「イタい女」と思われたかもしれない。結婚ラッシュに乗って婚活することがもしかしたら世間一般では正しかったのかもしれない。しかし、その人生は自分の性に合わなかった。高橋大輔が、引退の時期を、あるいは引退するかしないかも自分で決めるように、私も婚期は自分で決める。したいと思えばするし、したくないときに『30代なんだからそろそろ結婚を…』などと社会の通念に従うことはしない。私なんかより、高橋大輔は色んな声を聞いている。現役復帰にも、アイスダンスに転向することにも、否定的な意見は絶対に見聞きしたはずだ。しかし、彼は自分の納得する道を選んだ。他の大勢の野次に屈することなく、彼は自分の声に従った。その勇気がすごいと思った。昔から大ファンであった高橋大輔の偉大さを改めて知り、今日までファンでいて良かったと心から思ったのだ。そして、彼のアイスダンス選手としての初戦を見に行くため、今から一時帰国の予定を考え始めたのであった。
 
たいせつなことを教えてくれる高橋大輔
かんどうをくれる高橋大輔
はらはらしつつも見ずにはいられない高橋大輔
しんぞうが張り裂ける思いでいつも見ている高橋大輔
だれにも屈しない高橋大輔
いつまでもカッコイイ高橋大輔
すけーとが大好きな高橋大輔
けっこんしてください、高橋大輔